お客さんが座るカウンター席の方から聞こえて来た気がする。


あたしは入口のドアに近づき、すりガラス越しの中の様子を伺った。


またゴトゴトという物音が聞こえてきて、ガラスの向こうに人影が動くのが見えた。


「河田さん!?」


あたしはすぐにそう声をかけていた。


人影はバタバタと足音を響かせてこちらへ近づいてくる。


間違いない、河田さんだ!


そう思った瞬間、『ロマン』の入り口が開いた。


「モコちゃん!?」


少し埃をかぶっている河田さんが驚いた様子でそう言った。


「河田さん、よかったここにいて……」


あたしはホッと息を吐き出してそう言った。


まさか『ロマン』の中にいたとはおもわなかった。


一生懸命電波を探していたのが少しだけ恥ずかしくなる。