自室へ戻ると、苛立ちのあまり机を拳で強く叩いた。

叩いた拳から、じわりと痛みが広がっていく。


その痛みが徐々に荒立った心を落ち着かせていき、冷静に物事を考えられるようになっていった。



「・・・まだあの女は「死」というものに自覚がないだけ。日を追う事にそれは大きくなるだろう」



そうだ。


あと何日かすれば、徐々に「死」と言うものを自覚していく。

その時、あの女は私に縋るはず。



私は許せないんだ。

あの国が我が国を滅ぼす事は万が一でもあり得ないが、それでもその行動を起こした事に。

そんな愚行を起こした人間の血が流れるあの女が苦しまない事に。



「何が何でも、この報いは受けてもらうぞ、・・・ソフィア」

そう言って、痛みの消えた拳を強く握る。



その日はあまり眠れなかった。

強い酒を喰らいながら、厚い雲に覆われた闇の空をずっと眺めていた。