・・・えーと?


なんだその困ったような表情は。

おい、まさかこの状況においても眠れたんじゃないだろうな。


馬鹿な。

そんな図太い神経を持ち合わせている女が、この世に存在するだと?


「寝られたのか」


その言葉に対し、女は何も答えない。

だがその表情はいかにも「寝られました」といったような顔をしている。


・・・なんてことだ。

「死の宣告」に対して、動揺をしないだなんて。



私は女に「不愉快だ」と告げ、その場を後にする。

私の思い描くものではなかった事に、物凄い苛立ちを覚えた。


あり得ない。
そんなはずはないんだ。


「死」というものは、人を絶望に陥れる事が出来るくらいの力があるはずだ。

それなのにあの女には全く効いていないとは一体どういう事なんだ!