今までは自分から死ぬなんて考えられなかった。

けれどこの状況において、もしこのまま無理矢理なんて事を考えたら、それだったら自分から死ぬ方が楽だと、そう思った。



神の前で偽の誓いを立てるのは、まだいい。

だけど好きでもない、これから愛される事もない人に、私の初めてを奪われるのだけはどうしても嫌だった。

その人がどんなに格好良くとも、目の前の男が「金と銀の王子」と称えられた人間であろうとも。


ましてや他の妻と共に、私をバカにするような男にはなおさら。


そんな男に奪われるくらいなら、私は死を選ぶ。



私はそこまで落ちぶれてなど、いない。




私の真剣な眼差しに嘘ではないと感じ取ったのか、私を睨みながらため息を付き、やがて私を解放する。


握られていた手首にはくっきりと跡が付いていて赤くなっていた。

私は手首をいたわうように、交互の手で摩りながら身体を起こす。