「こんな遅い時間に来てしまってすまない。・・・入ってもいいか?」


と聞くわりには、もう既に片足がその扉を閉めないようにと、部屋の中に侵入している。

仕方なく頷いて、部屋へと招き入れた。


部屋に入った殿下はそのまま寝台に腰を掛ける。

そして何食わぬ顔で話し始めた。


「夕飯の時間になっても来ないから心配していたが、寝ていて起きなかったんだって?ナディから聞いたよ」

「あ、そうなのですか。全く覚えていません。余程疲れていたんだと思いますわ」

「大丈夫か?腹は空いていないか?」

「別に。食事会に食べた分だけで十分です」


食事会の時の態度とは打って変わって、至って普通の態度。

あの時は他の夫人と一緒になって、あんなに意地悪そうな顔で私に接していたというのに。


全く調子のいい人だ。

こっちは気分が悪くて仕方がなかったというのに。


・・しかし、こんな遅くに何しに来たのかしら?

寝台に腰を掛けられては、座るにも座れないし。


夜くらいは放っておいて欲しい。

出来ればずっと放っておいて欲しいのが本音だけど。