――昔の記憶を辿る。
初めての夜会……。
……ああ、私の初お披露目の、あの時。
私はアレックス様のエスコートで夜会に出られる喜びから舞い上がってしまって、参加客に扇子を持っていた手が当たってしまい、勢いよく落としてしまった。
取ろうとしゃがんだとき、先にその扇子を取り、私に渡してくれた人。
どんな顔だったかまでは覚えていなかったけれど、私を見つめた漆黒の瞳がやけに美しかった事だけは覚えている。
時は流れ、その記憶も思い出す事無く今までいたけれど。
まさかその時の人がフェルナンドだったなんて。
「あの方が、フェルナンド……」
「ええ。拾って渡しただけですし、貴女はあまり覚えてはいないでしょうが、私はあの日から貴女を忘れられず、ひたすら密かに思い焦がれていたのです。そして貴女が下賜されると聞き、私は真っ先に貴女の候補に手を上げた。しかし、貴女はあのような事件を起こし、そして自ら修道院へと行ってしまった」
フェルナンドは、一方の手に持っていたグラスを一気に飲み干す。
口の端から少し漏れたワインを舌で舐めとった。
「その時の私の気持ちが分かりますか?一気に地獄に落とされたような感覚。もう少しで私の傍に来てくれると思っていたのに、それが叶わなくなってしまった。私は荒れました。どうしてくれよう、と。すべては中途半端な事をしてきたアレク王子のせいだと、王子を恨みましたよ」
フェルナンドは私に顔を寄せる。
つつ、と長く骨ばった指が、私の唇をなぞった。
初めての夜会……。
……ああ、私の初お披露目の、あの時。
私はアレックス様のエスコートで夜会に出られる喜びから舞い上がってしまって、参加客に扇子を持っていた手が当たってしまい、勢いよく落としてしまった。
取ろうとしゃがんだとき、先にその扇子を取り、私に渡してくれた人。
どんな顔だったかまでは覚えていなかったけれど、私を見つめた漆黒の瞳がやけに美しかった事だけは覚えている。
時は流れ、その記憶も思い出す事無く今までいたけれど。
まさかその時の人がフェルナンドだったなんて。
「あの方が、フェルナンド……」
「ええ。拾って渡しただけですし、貴女はあまり覚えてはいないでしょうが、私はあの日から貴女を忘れられず、ひたすら密かに思い焦がれていたのです。そして貴女が下賜されると聞き、私は真っ先に貴女の候補に手を上げた。しかし、貴女はあのような事件を起こし、そして自ら修道院へと行ってしまった」
フェルナンドは、一方の手に持っていたグラスを一気に飲み干す。
口の端から少し漏れたワインを舌で舐めとった。
「その時の私の気持ちが分かりますか?一気に地獄に落とされたような感覚。もう少しで私の傍に来てくれると思っていたのに、それが叶わなくなってしまった。私は荒れました。どうしてくれよう、と。すべては中途半端な事をしてきたアレク王子のせいだと、王子を恨みましたよ」
フェルナンドは私に顔を寄せる。
つつ、と長く骨ばった指が、私の唇をなぞった。

