囚われ姫と金と銀の王子

着替えが終わり、ナタリアに案内されて食堂へと向かった。

食堂には既にフェルナンドが座って待っていて、優雅にワイングラスを傾けている。



「ああ、待っていましたよ、エリス。さあ、私の隣へ」


普通は向かいに座るはずなのだが、なぜかフェルナンドの隣に座らされ、座った途端に腰に手を回した。

驚いて身体がびくりと跳ねる。


「はは、なにをそんなに驚いているのです?」

「なぜ手を回すのですか!」

「離れたくないからですよ、エリス。可能な限り、私はエリスに触れていたい」


フェルナンドは怪しい笑みを浮かべる。
ぞくりと背筋が粟立った。


……どうしてこうも甘い言葉を私にするの。

その言葉に、嫌だと思わない私もどうかしているけれど。


フェルナンドのかける言葉は、私が前よりアレックス様から聞きたいと願ってやまなかったもの。

でも決してアレックス様の口から聞くことは出来なかった。


唯一『愛していた』という言葉を、最後にアレックス様から貰って、それだけで十分だと今を生きてきたはずなのに。

過去形ではなく、現在進行形で愛の言葉を囁かれる事が、こんなにも心を揺らすものだとは知らなかった。


アレックス様ではない、フェルナンドという会ったばかりの人。

私の気持ちなど無視をして、強引にこの城まで連れ去った人。


本来ならば恐怖や危険を感じて警戒しなければいけないのに、どうしても彼の甘い言葉がその警戒を緩めてしまう。


それはどうしてなのか、自分でもよく分からなかった。