それは初めての経験だった。
口づけが初めてな訳ではない。
もちろんアレックス王子とも、数える事が出来ないくらいの口づけはある。
けれどそれは軽く触れるものであって、こんな情熱的なものは経験したことがない。
息が出来ないからか、それとももっと別な原因か。
意識が遠のいていく感覚がして、身体の力が抜けてしまう。
そうなってようやく唇が離れた。
身体が酸素を取り込もうと、息が荒くなる。
しかし身体の力は抜けたままで、なすすべなくフェルナンドの身体に寄りかかってしまった。
「経験がおありかと思ったら、このような口づけは初めてでしたか」
「な……、なんてこと、を……」
「ますます愛おしくなりましたよ、エリス。もう絶対に離さない。貴女は私のものだ」
その言葉を最後に、私は意識を手放してしまう。
遠くの方で私の名を呼ぶ声が聞こえたが、それに応える事も出来ず、そのままフェルナンドの瞳のような漆黒の闇へと落ちていった。

