「私は貴女を攫いに来ました。拒否することは出来ません」
え?と言おうとした時には既に私の身体は宙に浮き、軽々とその騎士の腕の中に横抱きにして抱えられる。
手に持っていた紙袋が反動で落ち、その音で奥にいた修道女のひとりが裏口へと向かってくる音が聞こえた。
「見つかってはいけない。どうか抵抗なさらずに。大きな声など上げぬよう……」
騎士は小さな声で私に言うと颯爽と駆け出し、近くで待たせていた馬車に私を押し込むようにして乗せた。
「早く動かしてくれ!」
その声に馬車は走り出す。
ぐらぐらと大きく揺れて、身体を起こす事が出来ない。
騎士は窓から外を警戒するように見つめた後、ある程度走ったところで向けていた視線を戻して、ふう、と息をひとつ吐いた。
「上手くいったようだ。……ああ、申し訳ない、手を貸しましょう。さあ、椅子に座って」
騎士は私の身体を起こして、椅子へと座らせた。
「え、っと……これは」
どういう事?
どうして私が馬車なんかに……?
今の現状が全く理解出来ない。
混乱する頭の中。
そんな私に、目の前の騎士は優しく微笑んだ。

