「―――それでは神に祈りましょう、今日も素晴らしい一日となるように」




「「「はい、シスター」」」


厳かな祈りの部屋で、神の像を前に静かに祈りを捧げる。

こうして私、エリス・ゴートランド・ヴェルナルの一日は始まる。




私は少し前まで、アーロン国のアレックス王子の第一夫人だった。

正妃候補という正式な妻ではなかったけれど、城の中で優雅に暮らしていた。


ところががレイモア国のソフィア王女が第4夫人として迎えられてから、その生活は一変する。

あれだけ私の部屋に来ていた殿下の来る回数が減り、明らかに気持ちはソフィア王女に傾いているのが分かった。



悔しくて悔しくて。

その嫉妬は大きく膨れ上がり、気が付いた時にはソフィア王女を傷付けていた。


その時はもう自分の命などどうでもいいと、そう思った。
暗くかび臭い地下牢の中で、そのまま朽ち果ててしまってもいい、そう思っていた。


しかし殿下はそんな汚い場所に来て、濡れた地面に膝を付け私に頭を下げる。

そして、私の事を少なからず好きだったと、そう言ってくれた。