涙が溢れて目の端から零れた。

その涙は止む事無く流れ続ける。



「傷が痛むのか?どうしてそんなに泣いているんだ」

「・・・死ねなかった自分が悔しくて泣いているのです。私がいなくなれば殿下も悪く言われなくなる、この国だって良くなるはず。それなのに、私は生きてしまった。・・・それが辛くて」


その言葉に、私の手を握る力が強くなった。

殿下は俯き、少し肩を震わせていた。


声こそ出ていないものの、殿下もまた泣いているように見えた。


「殿下・・・?」

「死ぬ事を考えるなと言ったじゃないか。どうしてそう生きる事を諦めようとするんだ・・・!」


俯きながらも、下唇を噛んで悲痛な思いに耐えているのが分かった。

その姿に胸が張り裂けそうになる。


「全て悪いのは私なんだ、ソフィアは何も悪くない。私がどう悪く言われようと気にしない。私はソフィアを幸せにしたいんだ。心から笑顔にしたいとそう思っているんだ。なのに」

「またそんな事を言って・・・。殿下はエリスにまだ心があるのでしょう?エリスは私に『最後のお願いにと私を抱いてくれた』って仰ってました。少なからずお互いが想い合っているのに、私が心から笑える訳ないじゃないですか。どうして私を正妃にするのです?同情ですか?そんな気持ちで私を正妃にしても」

「・・・何を言っているんだ?ソフィア」

私の言葉を殿下が遮る。

俯いていた殿下の顔が上がり、眉間に皺を寄せて私を見つめていた。

その表情に私は困惑する。


・・・どうしてそんな顔で私を見ているのかしら?


私、何か変な事を言った?

いや、でも確かにエリスはあの時そう言って・・・。