―――長い間、夢を見ていたような気がする。



それは不思議な夢だった。


泣いてばかりだった母が、笑顔で花畑を歩いている。

そして私にこっちへ来いと言わんばかりに、手まねきをしているのだった。


私は母の元へ行こうと足を踏み出すのに、いつも誰かに呼ばれて後ろを振り返る。


すると一瞬現実に戻る。

けれどまた気が付くと母がいる世界にいる。


何回も何回も同じ夢を見て、ある時手招きをしていた母が手を振った。

少し寂しそうな表情を浮かべていたけれど、でも幸せそうな顔で。



ハッキリとは聞こえなかったけど、母は一生懸命口を動かして何か伝えようとしていた。



母がどんどんとぼやけていく。


現実に引き戻されるのだと理解した時、母の声がハッキリと聞こえた。





『ソフィア、その時が来るまで生きて。そして幸せになって―――・・・』