それから殿下と手紙のやり取りを始め、夜会では私をエスコートしてくれるまでになった。

そして、私に殿下との結婚の話が舞い降りる。


それは正式なものではなかった。

あくまで婚約者としての位置づけのようなもの。


私の他にどうやら二人、後に仮の結婚をあげる者がいるという。

それでも私は嬉しくて、私を選んでくれた事がとても嬉しくて。


ようやく私の努力が報われたのだと、そう思った。



それから大聖堂で簡単な神への誓いを立て、勿体無いくらいの広く豪華な部屋を用意して貰い、殿下の第一夫人として城での生活が始まった。


夜、殿下は私の部屋へと訪れる。

私への愛の言葉を掛ける事はなかったけれど、私を優しく抱いてくれた。


天にも昇る気持ちとはこういう事なのだろう。

殿下の甘い吐息に惑わされ、私の頭の中はいつも真っ白に染められていく。


周りではいずれ正妃は私になるだろうと噂され、私もまたそうであって欲しいといつも願っていた。

殿下は他の二人には見せない顔を、私だけに見せる。

きっと殿下も私を少なからず想ってくれていると、その時は感じていた。


幸せな毎日。


そんな毎日がこれからもずっと続いていくのだろうと、そう思っていた。