公爵令嬢として生まれた私は、小さな頃から令嬢としての振る舞いと教養を厳しく躾けられた。

両親の願いは、いずれこの国の王妃に私がなる事。

私もその両親の想いに応えようと、必死に努力したのを覚えている。



・・・アレックス王子と出会ったのは、初めて参加した城での夜会。

とても優秀で加えて美丈夫なお方であると聞いていたから、それはもう心躍る気持ちでその夜会に参加したのを覚えている。


遠くから一目見るだけでもいい。

一言でも会話が出来ればそれで十分。



最初はそんな気持ちだった。


けれど会場内で一際目立つ殿下のその立ち振る舞いに、一瞬で私は殿下の虜となった。

身体中が燃えるように熱くなり、激しい鼓動が抑えられない。


お話をしたいけれど、いきなり声を掛ける訳にもいかない。

私はただ、潤んだ瞳で殿下を見つめるだけだった。



その日から私の心の中は殿下でいっぱいになって、それ以外の事を考えられなくなっていた。

早く殿下にお会いしたい、そう思いながら次の夜会へと想いを馳せる。


その夜会では、まさか殿下自ら私へ声を掛けてくれた。

喜びのあまり、身体が震えてしまう。


赤くなる顔を扇で隠しながら、それでも私の瞳は殿下を掴んで離さない。

飛び出してしまいそうな心臓を抑えつつ、殿下との会話を楽しんだ。