殿下もまた人前で見せる笑みを作ると、扉の横に立つ騎士たちに扉を開けるように指示を出した。

それを受け、騎士たちは大きなその扉を同時に引いて開ける。


開けられた瞬間、あれだけ騒がしい声がさあっと波が引くように静かになった。

そして人々は、開けられた扉の前に立つ私達へと一斉に目線を向ける。



痛いくらいに突き刺さる視線を感じながら、私は精いっぱいの笑みを浮かべ人々の間を殿下のエスコートを受けながら歩いた。


その視線は決して歓迎されているものではない。

殿下がいる手前みな表情には出さないが、明らかにその目は冷ややかなものである。


そう見られるのも仕方がない事なのは分かっている。

だからこそ、私がこの国の王妃になってはいけないという事も。


殿下は分かっているのだろうか?


私を王妃にする事で、国民の心が離れてしまう恐れがあるという事を。

それは国を滅ぼす始まりであるという事を。



それなのに、どうしてそこまで自分の意地を通すのだろう。