扉の方から声がして振り向くと、燕尾服を身に付けた殿下が立っていた。

髪で隠していた銀色の瞳も、髪が後ろに流されて今日はしっかりと殿下の顔が分かる。



初めてちゃんと見る殿下の顔と、いつもとは違う出で立ちに、思わず胸が高鳴った。


「殿下・・・」

「ソフィアが好きにならないのなら、それは仕方がない。けれど私はソフィアを離すつもりなんてない。愛のない結婚なんて貴族ならいくらだってある。私は辛い想いなんてしない。・・・ソフィアが隣にいれば、それでいいのだから」


靴を鳴らして私の目の前に立つと、手を握って私を立ち上がらせた。


「行こう、ソフィア。もう既に参加者は私達を今か今かと待っている」

「ちょ、殿下・・・!」

「君の話は一切聞かない。私の好きなようにやらせて貰う」



殿下は私を見ることなく、ただ前だけを見据えていた。


私は引きずられるようにして、夜会への会場へと連れていかれたのだった。