「殿下はお優しいのですわ。弱い人間を放ってはおけない性格の持ち主。だから私のこんな無茶なお願いでも聞いて下さるの。・・・ごめんなさいね、あなたと結婚するお方と一夜を共にしてしまって」


「・・・何が言いたいの?」


「お気を付けあそばせ、王女様。いつまでもあなただけがずっと愛されると思わない事ですわ。殿下のお心は思う以上に変わりやすいようですし、その場の雰囲気に流されやすいお方。これからの人生、色々と大変かもしれませんわね」

「・・・っ」


「・・・それでは私はこれで。あまり女らしくない行動は殿下に嫌われますわよ」


ふふっと、声を漏らして笑いながらエリスは部屋へと消えていく。


残された私の心の中は、複雑な想いで揺れていた。


あれだけ私に想っているなどと言っておいて、お願いされたからと殿下は別な人を抱く事が出来る。

その時だけでも、他の人を愛する事が出来る。



どうしてそんな事が出来るの?

心がなくても抱けるものなの?

愛せるものなの?


殿下を好きではない筈なのに、その事が酷く心を痛めた。


その時はもう贈り物の事など、すっかり頭から消えていた。

それよりも、殿下がその行為を簡単にしてしまえる事がとても苦しくて、どうしようもなかった。