私はそう言って、その場を去ろうとした。

だがエリスは呼び止めるように、私に話しかける。


「あら?殿下の所へ行くのですか?・・・そういえばあなたが正妃になると決定したのでしたわね。おめでとうございます、ソフィア王女」


心の篭っていない言葉を吐いた後、エリスは軽く腰を落とす。

まさかここでそれを言われるとは思わず、どう返したらいいか分からずに困惑する。


何も言えない私を尻目に、エリスはゆっくりと顔を上げてさらに話を続けた。


「昨日も私にひたすら謝ってきたのですよ?もうこの件についてはいい、と言ったのに、すまなかったと。余程あなたは殿下に愛されているのですね」


「・・・そう、ですか」


「・・・でもね、ソフィア王女。殿下は昨日、私を抱いてくれたのです。殿下との最後の思い出にとお願いしましたら、殿下は快く受け入れて下さいましたわ。それはもう優しく私を愛してくれましたの」



そう言って勝ち誇ったような表情で私を見つめた。


エリスの言葉に、自分でもよく分からない感情が一気にこみ上げる。