透明な液体が入ったそれを、朝日の腕に打つ。


朝日は小さくうめき声を上げ、その痛みに顔をしかめた。


「やめて、朝日!!」


慌てて朝日に駆け寄ろうとするが、クラスメート3人に羽交い絞めにされてしまった。


目の前で朝日が苦しんでいるのに、手を伸ばす事もできない。


すべての液体が朝日に注射され、朝日はその場に倒れてしまった。


「先生! 何を打ったんですか!?」


「記憶が戻る注射だよ。元々薬と催眠術を使いこいつの記憶を消していたんだ。目を覚ませばそのすべてが消えて、元通りになる」


朝日が……元通りに……。


記憶を無くしてからの朝日しか見たことのないあたしは、小さく呼吸を繰り返してその様子を見つめていた。


「みんな。感動の再開となるだろうから一旦教室から出ておこうか」


緒方先生がそう言い、みんながゾロゾロと教室から出て行く。


「待って……ねぇ、1人にしないで!!」


朝日が残酷な人殺しだ。


一家全員を殺して金を奪った犯人だ。


「じゃぁ、また一時間後に来るからね」


最後に教室を出た菜々花がそう言い、鍵を閉められる音が響いたのだった……。