あたしは自分の手を見下ろしてそう思った。


手加減しても、全然足りていなかった。


「うわ、あれなに?」


リナが大げさにそう言う。


「叩かれた痕だよね?」


「誰にやられたんだろ?」


「もしかして、歩君じゃない?」


クラス内からそんな話し声が聞こえて来る。


あたしは咄嗟に立ち上がり、歩の手を掴んで教室を出ていた。


こんな事をしたら殴った相手があたしだとバレてしまう。


でも、このままじゃ手形がクッキリと残ったままだ。


「保健室へ行こう」


あたしは一言そう言い、歩を連れて保健室へと向かったのだった。