と、一通り悶えたところで妙に冷静になり、がばっと身体を起こすと自分の身体を確認した。

服に乱れはない。脱がされた形跡もない。
下の方も・・・うん、特に不快感はない。

どうやら酒の勢いでうんぬんではなさそうだ。
その事にホッとする。

ひとりで寝るには広すぎるセミダブルのベッドから離れ、寝室であろう部屋の扉をこっそり開けると、細長い廊下の先にリビングの扉が見える。
扉はガラスが埋め込まれていて、ガラスの先に見覚えのある男の後ろ姿が見えた。
やはりここは岡田さんの家だ。


「お・・・はようございます、でいいですか?」

リビングの扉を開け、そう岡田さんに声を掛ける。
岡田さんは煙草を加えながら、コーヒーを片手にカーテンを開けていた。

「あ、おはよう。もう起きたんだ」

そう言って、微笑む。
朝っぱらだってのに、この爽やかさである。

ワックスでしっかりセットしていた髪も、どうやらシャワーを浴びたからか無造作に流れているが、またそれが仕事をしている時とはちょっと違う爽やかさを醸し出している。

そして半袖のTシャツに黒のスウェットのズボン。
Tシャツの袖から出た腕は、意外と筋肉質でガッチリとしていて、とても男らしい。
その格好はオヤジスタイルの基本だが、彼が着るとそんな風に見えないから不思議なものである。