「無茶するなよ、心配するじゃん」



体温計をフリュイに手渡すと、眉根が寄せられた僕の額を見て彼はきょとんとした。



「心配してくれたの?」


「するよ!」



きょとんとするところかな。


ここまで旅を共にしてるのだから、心配くらいするよ。


彼はやっぱりどこか謎だ。



「フリュイなのに心配してくれるんだ…」



ネガティヴな発言に聞こえるそれに、僕は苦笑した。


なんだか、フリュイらしくないと思ったからだ。


熱があると、彼はこうなるのかもしれない。



「フリュイでもそうなるのかぁ」



体温計を口に咥えたまま、パタンとベッドに体を沈めたフリュイ。


間延びした声は、先程と変わらず意外だとでも言っているようだ。



心配してもらえなかった経験でもあるのだろうか。


よっぽど見放されて生きてきた、とか。


あまり気にしてもらったことがない、とか。


………。



そこまで考えて、はたとフリュイの顔を覗き込んだ。



いつもならここで心配されたことくらいたーくさんありますけどー、と言ったりするのだが。


ぽけーっとしているその瞳は、ん?と言うようで、今はいつものように僕の考えを読むことは出来ないらしい。



まただ。


らしくない。



そんなに熱がひどくあるのか?



「バベルー、フリュイ眠いー」



とろんとした目に、まぶたが落ちてきている。