ギクリという風に肩を上げてから、フリュイはへらへらと笑みを作った。
「えー? だってほら有名人ご贔屓のお店として有名じゃん」
「だから?」
「今時の若者はみーんな知ってるよー」
それは本当か?
すごく嘘っぽいんだけど。
「とにかく! もう地図はフリュイに任せて」
「えー……」
「とりあえずカフェまではフリュイについてきてよ、わかった?」
「……わかった」
ちょっとでも地図で場所を間違えていたのだから、フリュイより上に出れなくなってしまった。
ちくしょう。
じゃなくて。
フリュイがいてくれなきゃ、僕はカフェ・レヴまで辿り着けていないかもしれない。
フリュイに感謝しなきゃだ。
……あれ?
フリュイのことは、渋々連れてきたはずだったのに。
よく思い返して考えれば、連れてきてよかったことだらけだ。
僕って、運が強いんだな。
なんてね、違う違う。
役立つフリュイを連れてきてよかった。
「フリュイ!」
「何ですか、おーじさま」
「君には感謝感激だよー」
にこにこ笑って彼の頭に手を乗っける。
「急に何。気持ち悪いんだけど」
そうドン引きしたふりをするなよ。
それ、照れ隠しだろ。
知ってる知ってる。
「ニタニタしないで。歩くの遅いよ、置いてくよ」
「はいはい」
うん、君は最近話題のアレだね。
ほら、ツンデレってやつだね。