「フリュ」



尋ねる間もなく、ぐいっと下に胸倉を掴まれる。


ひいっ、と顔の筋肉が引き上がり、思わず目をきゅっと閉じる。


殴られる……?


なんて僕の思考とは裏腹に、流れるような所作で僕の額が掻き上げられた。


そこに感じたのは、オーナーのそれとは全く違うふわりとした柔らかさ。



………今の何。



1分ほどフリーズした僕は、やっと状況判断が完了して目をうろちょろさせた。


そして最終的に行き着いたフリュイのところで、僕はボンッと顔を赤くした。


フリュイはそんな僕を腹を抱えて笑って、3人に言った。



「バベルは王子様なんだから、いじめちゃダメですよー。そう言うフリュイもイタズラしちゃったけどっ」



3人もまた僕と同じように動きを止めていたが、それを聞いてケラケラと笑い始めた。


え、この状況、変じゃないか?


さっきのは、イタズラだったのか?



目をパチクリさせる僕を一頻り笑った3人は、荷物を持ち直した。



「さて、ではまた。アドバイスありがとうございました。そっくりそのままバベル様にお返ししますね」



ジルが僕に優しく微笑みかける。


僕は少し首を傾げながらも頷く。



「次会う時は、結婚式かしら。ちゃんと私達のこと呼んでちょうだいよ?」



ロゼアがキラキラしたドレスをはためかせる。


僕は「もちろん」と頷く。