果歩に連絡をして30分後、家のチャイムが鳴った。


お母さんは買い物に出かけてしまったため、家にはあたししかいない。


あたしが玄関まで出てドアを開けると、そこには少し青ざめた果歩が立っていた。


手にはCDショップの袋が握りしめられている。


「し……新曲の発売は来週だって……」


「そんな事知ってる」


あたしはそう言い、果歩から袋を奪い取った。


新曲が買えないと知った果歩がどう対応したのかと、袋を開けて中を確認した。


するとそこにはBBCが半年前に出したシングルが一枚入っていた。


発売中の中では確かにこれが一番新しい。


果歩の判断にあたしは内心満足していた。


あたしに命令されて手ぶらで家に来たり、断ってきたりしなければ合格範囲だ。
あたしはニコッと笑顔を浮かべた。


青い顔をした果歩の表情が少しだけ緩む。


「上がれば?」


「え、でも……」


できれば家には入りたくないのだろう、果歩は戸惑ったように視線を泳がせた。


「せっかく買ってきてくれたんだから、一緒に聞こうよ」


そう言い、果歩の腕を掴んで無理やり家に上げる。