でも……どうしても卓君のことを、放り出せない。

雄介君は、卓君の背負う傷についてまでは知らない。
だから、当然結城君も知るはずがない。


「茜?」


背中に回った手が力を増す。
ずっとこうしていられたら、幸せなのに。


「ずっと、結城君のことが好き、でした。結城君の泳ぐ姿が、大好きでした」


彼のシャツをギュッと握りしめる。


「でも、今は……卓君を支えたい」


今でもあなたのことが好き。
でも……。

結城君は手の力を緩め私を離すと、真っ直ぐに私の瞳を見つめる。


「どうして? あいつは茜を無理矢理抱いたんだろ?」

「違う。そんなことされてない。あれは、嘘」


私がそう言うと、結城君は目を見開き、しばらく言葉を失った。