「歌も止めたんですか?」 「そんなもの、とっくに……」 「止めないで! あたしは宮川さんのファンだから、またあなたの歌が聴きたい!」 「レッスンにはお金がかかるから無理だよ」 ベンチの前で仁王立ちになっているあたしに、宮川さんは申しわけなさそうに言う。 「……ごめん、これからは愛梨のために歌うんだ。井上さん、今日会ったことみんなには秘密ね」 そんな――。