無意識のうちに、唇を噛み締めていたらしく、熱と痛みがじわりと伝わる。

わずかにまぶたを伏せた。



「木原さん、大丈夫?」



そう言って、声をかけてくる女の子。

心配そうに眉を下げているのは、



「西田さん……」



西田 笑花(にしだ えみか)さん。

はるが溺愛している彼女だ。



西田さんも1年生の頃から同じクラスだったけど、親しくなったのは去年の冬。

すれ違いからかよく知らないけど、一時期別れていたはるたちが復縁したあとから。

いつもびくびくと怯えていて、はる相手にしかほとんど言葉を交わさなかった彼女と話すようになったんだ。



そうしたら笑顔が可愛いし、素直ないいこだしと声をかけることが増えた。

はるに嫉妬の瞳を向けられるようになったけど、彼女と仲よくすることをやめるつもりはない。



最近は受験があるから控えているけど、今では休日にふたりで遊ぶ関係だ。