自然と紡より後ろを歩いていたあたしは、彼が足を止めたことでふと顔をあげる。

あたしが考えごとをしていた間にいつもの曲がり角も曲がっていたらしく、目の前はもう学校の最寄り駅。

いつもあたしたちが使っている駅だ。



「じゃあ俺、このまま塾だから」

「あー、うん」



こくりと頷く。

あたしたちの家の路線は同じで、途中までは一緒に電車に乗れるんだけど、彼の塾は違う。

だからここでさよならだ。



「また明日ね」



そんな言葉を残して、くるりと簡単に背を向けた紡がその場を離れた。

あたしはまだ、動けないまま。



……ほら、きっと。

こうやって君はあたしから離れていく。



あたしが手放せない大切なものの中、もがいているというのに。

君は、先へ先へと進んでしまう。



だからあたしは、紡と離れたくないから、……遠ざかりたい。

彼女じゃないならこの距離感はおかしくない、当然のものだと受け入れることができるはずだから。

別れてしまえたらと、思うんだ。



好きだからこそ、さよならする。

きっと今はその準備期間。