あたしも西田さんと同じように駆け寄って、紡の前に立つ。



「紡、帰ろう」



大きな瞳にかすかに笑うあたしが映る。

頷いた彼と肩を並べて学校を出た。



普段どおりの様子の紡にちらりと視線をやった。

その様子が気になったのか、彼もあたしに目を合わせる。



「なに?」



首をわずかに傾げ、隣のあたしに問う。



「紡は今日も塾だよね?」

「そうだよ」

「そっか、頑張ってね」



あたしの発言に紡が顔をうかがってくる。



「昨日のお願い、叶えなくていいの?」



うっとわずかに唸り、頬があつくなる。

顔があっという間に赤く染まったのが自分でもわかる。



……昨日のこと。

あたしは今まで隠していた気持ちを紡に伝えて、わがままをたくさん言った。



塾に行かないで。

寄り道して。

あんまんをはんぶんこして。



そして、ずっとそばにいて、と。



そんな冷静になれば羞恥心から地面に埋まりたくなるような発言に、紡は応えた。

……キスで。