「初売りでしょ?
あたし、今年はいいや」

「そう?」

「ふたりで行って来なよ」



ひらひらと手を振れば、残念そうにしながらもようやく納得したのか顔を見合わせる。

じゃあお土産買ってくるわね、ってあたしは子どもじゃないんだけど。



「じゃあお留守番よろしくね」

「はいはい、行ってらっしゃい」



ふたりがいなくなるだけで家の中が静かになる。

自分が器を置く音なんかがやけに大きく響く。



その空間の中、はっとため息を吐き出した。

そしてそっとスマホを取り出す。



『あけましておめでとう!
今年もよろしく。
初詣一緒に行かない?』



これは昨日の夜中、年越し直後に紡に送ったあたしからのLINEのメッセージ。

その返事がおそらく返ってきているはず。



少しどきどきと心臓が音を立てるのを感じながらロックを解除した。

そして通知は1件、差出人の名前は期待していたとおりに紡。