鳥のウグイスを意識してなのか、鮮やかなウグイス色をした定期証書が憎たらしい。
一日の業務を負えるころには、時計は二十時を回っていて、それから電車に乗りアパートに着くころには、二十一時過ぎ、という、飲み会コースのような日々をこれから送ることになるのか……。
そううんざりしたのは、〝ウグイス定期〟が始まって一週間が経ったころだった。
21時32分発の電車に揺られ、ぐったりしながらの帰路はもう七日目を迎えていた。
21時51分に駅につき、アパートにつくのは二十二時すぎ。
もうこれを何年も経験している木崎さんたちは慣れっこなのか〝一年に一度の社畜期間だ思う存分働くぜイェーイ〟みたいなノリだけど……私もいつか慣れるのだろうか。
壊れて、イェーイ!とか言いたくなるのだろうか。
その前に、〝ウグイス定期〟なんて廃止になればいいというのが正直なところだけど、毎年行われるということは、会社にとってはプラスなんだろうし、きっと続いていくのだろう。
一ヶ月とか……。
期間が長いだろ。一週間にしろよ。
と、決して口には出せないような汚い言葉を心の中で思いながら、電車を下りる。
階段を下り、ロータリーも過ぎ、大通りの道を歩く。
ぴゅっと肌寒い風が吹き付けてくると、むき出しの顔がぴりぴりとする。
十月末。
いつの間にか、個人的には過ごしやすい、とは言えない季節に入っていた。
そういえば、駅前にあった木も紅葉が始まっていた気がする。



