定期預金は、支店ごとに金額のノルマがある。

だから、受け入れ数がすごくて忙しいなんていう事態は、とても喜ばしいことではあるものの……社員にとっては、残業数時間が毎日確実となるこの一ヶ月は、地獄とも言えるようだった。

先月くらいから、やけに預金課の人が私に定期預金の作り方を念入りに教えてくれるなぁ……と思っていたけれど。
おそらく、〝ウグイス定期〟をつくる上での即戦力が欲しかったのだろうと今更気づく。

支店内にいる社員、それぞれがこれからくるであろう仕事に気合いを入れ、静まり返っているフロアはなんだか異様にすら感じるほどだった。

窓口に直接いらっしゃるお客様、営業先の個人のお客様、営業先の企業……と、たしかに顧客はたくさんいるし、忙しそうだけど。

正直そこまでのものなのだろうか……。
騒ぎすぎじゃ……?という、失礼半分、甘さ半分の考えを捨て、私も気合いを入れ直し開店時間を迎えた。


結論からいえば、仕事量はすごかった。

ボーナス前後の七月八月も割と量はあったけれど、その比じゃない。

窓口から依頼される定期を作りつつ、日中の日々の業務をこなすだけで一日は終わり、そして閉店してから、営業が預かってきた定期預金の作成にかかる。

普通なら日中に終わっている処理が閉店後に伸び、それが終わるまでは締めの作業ができない。

ただの定期を作成するだけならまだしも、〝ウグイス定期〟は特別金利だ。

特別金利入力の際には、いちいち、課長代理のオペレーションカードを端末に読み込ませ、その使用理由、使用した社員名を〝代理カード使用帳〟にわざわざ記入する必要がある。

そして、できあがった〝ウグイス定期〟は、課長代理に精査してもらい、印鑑をもらわないといけないという、細々した作業がまた面倒くささに拍車をかけていた。