「野々宮さんは、平沢さんが好きだとかじゃないんでしょう?」
わずかに首を傾げられ、コクリと頷いた。
それを見て、鳥山さんは満足そうに微笑む。
「私はね、平沢さんが好きなの。もちろん、そういう意味でね」
なんとなくだけど……部屋に来ているって時点で、そうなのかなとは思っていた。
貞操観念が皆無だとかそんな人じゃない限り、好きでもない男の人の部屋で、ふたりきりになんてならない。
それを、平沢さんが気付いているのかはわからないけれど。
「……そうですか」
「うん。だからね、野々宮さんがそういう意味で平沢さんを好きっていうんじゃないなら、少し遠慮してもらえないかなって」
にこりと微笑んだ鳥山さんの髪を、秋の色をした風がサラサラと揺らす。
「あまり、近づきすぎないでね」
ぴゅっと吹き付ける風が、冷たく頬を撫でた。
部屋に戻ってからテレビをつけると、毎週見ている番組が放送されていたけれど。
なんだか見る気にはなれなくて、しばらくながめたあと、テレビを消した。



