「華乃ちゃんの雪女こそすげーはまってたよな。俺、暗闇で見たとき、ぞくぞくしたもん。凍らされるかと思った」

「顔をちょっと白く塗って浴衣着て水色のカラコンして、ぼそぼそ話しただけなんですけどね。
初めに聞かされる説明のせいか、照明のせいか、みんなうろたえてましたね」

〝雪女とは、三秒以上目を合わせたら凍結してしまうのでご注意ください〟

そんなアナウンスを入場前にしていたせいか、下から照らす青白い照明のせいか、突然スイッチの入った扇風機から作り出される風のせいか。

どれにしても効果は抜群だった。

最初は浴衣とか面倒くさいな……という気持ちしかなかったけれど、私はただ立ってぼんやりとしていればいいだけだから、結果的には楽だったのかもしれない。

お客さんを追い回さなくちゃならないから傘おばけだとか、こんにゃく係だとか、照明だとか。
そういうのから比べれば、ずいぶん。

「華乃ちゃんの顔が綺麗だから迫力があったしね。三秒以上見てたら凍るって説明受けたくせに、見惚れてる男とか結構いたろ」
「まぁ普通に目が水色の人がいたら私も見ちゃいますし」

答えながらサラダを入れるためのお皿を出すと、そこに平沢さんがレタスとトマトを入れていく。