「平沢さんのそういうところに甘えておきながらこんなこと言うのもアレですけど。
なんでも許して結果、平沢さんがツラくなるみたいなの、やめたほうがいいと思いますけど」

「あれ、華乃ちゃん俺のこと心配してくれてんの?」
「オーブン、何度で何分ですか?」
「240度で二十分」

言われたとおりにセットしていると、平沢さんがフライパンやらまな板を洗い始める。

とりあえず手が空いたから、飲み物のグラスでもと思い、棚から取り出していると、平沢さんが洗い物をしながら言う。

「まぁ、俺だって誰彼構わず、わがまま許すわけじゃないから」

だから大丈夫、ということなんだろうか。

高校時代のただの後輩に、ここまで世話を焼いておきながらどの口が言うんだと、小さく息をつく。

「……そういう、含みのある言い方、やめたほうがいいですよ。だから、高校時代、平沢さんの周りには勘違いした女が多かったんですよ」
「ひどい」

平沢さんは、図星をさされたのか、困ったみたいな顔して笑って、洗い終わったフライパンをカタンと置いた。
それから、なにかを思い出したように私のほうをパッと見る。

「そういえば、今度、高校の文化祭あるの知ってる?」
「知らないです。でも、そんな時期っていえばそうですね」