「ああ、あと、最近の子は仕事を覚える前にやることやって、すぐに出来ただなんだって仕事を平気で辞めるとか、そんなことを言ってました。
あの社長、平気でセクハラパワハラ発言してくるんですけど、社内の人はよく耐えてますよね」
あれが上司だったりしたら……私だったら速攻でコンプライアンス課にメールしているところだ。
もっとも、いくらコンプライアンス課に報告したところで、会社のトップとなれば裁いたりできないのかもしれないけれど。
「よくそんなこと言われておきながら、そんな、淡々と……」と言われ見ると、樋口さんは呆れたような顔をしていた。
「私も、言われたのよ。歳のこととか。もう若くないんだから笑顔ひとつで契約がとれると思ってるなら勘違いだとか……そもそも、媚びるような笑顔は商談では不愉快なだけだとかね」
白い煙がもくもくと上がり、換気扇に吸い込まれていく。
「梨元社長は、ただ嫌味を言って弄りたいだけなんだし、気にする必要なんてないって思うんだけどね。
色々気持ち的に追い詰められてるときにあんな風に言われると、堪えるのよ。
自分の営業スタイルとか、これでいいのかなって思ってたりするときだったから余計に」
「……意外です」
「え?」
「樋口さん、自分に自信を持っているように見えるので、そんな風に仕事に対して不安に思ったり弱気になったりしないのかと思ってました」
そう言うと、樋口さんは脱力したように笑う。



