「若いからって理由だけで今は許されるかもしれないけどね? そういう態度はこれから先、キミ自身……野々宮さんだっけ? が大変になっていくだけだと思うんだよねぇ。
自分の首を絞めかねないっていうか……ああ、ほら、その顔。いつもツンツンっていうかさ、淡々としてて無表情じゃない」

首を傾げ自分の顎を撫でながら言う梨元社長。
その視線は、言葉同様、完全に私を見下しているもので、腹立たしい以外の感情はない。

「野々宮さん、今まで周りにチヤホヤされてここまできた感じの子でしょ。顔立ち整ってるもんねぇ。
お人形さんみたいだし、髪も……なんて言うんだっけ? ゆるふわロング? とかなんとか、そういうの流行ってて男受けいいらしいしね。
いや、悪く言いたいんじゃなくてね、せっかく可愛いのに笑えもしないんじゃ勿体ないよって話」

胸元まで伸びた髪をジロジロと舐められるように見られて気分が悪い。
背中をブルリと寒気が走った。

「野々宮さん、女の子なんだから。ニコニコすることもできないなら、会社にいる意味ないんじゃないの? 男性社員だとかっていうならクールな態度もビシッと見えていいんだろうけど、女の子がそれじゃあさ。やっぱり愛想振り向くのが女の子の仕事って風習まだあるしね。分かる? 言ってること」

どこか楽しそうに口元が歪んでいるのは、私がこれから泣き崩れるのを想像してだろうか。
まったく、本当に趣味の悪いことで。

「ご心配いただきありがとうございます。以後気を付けます」

短い言葉のあと、頭をさげ、嫌味になるくらいにニコリと満面の笑みを浮かべる。

予想外の反応だったのか、梨元社長の瞳が驚きから見開いた。
それを見て、ざまぁみろと心の中だけで口悪く思う。

――仕事は……想像していたものよりもくだらなく……そして、大変だ。