「素直、ではないですね」
「だろー? だから、大川は野々宮は平気そうだったって言ってたけど、それって本当かなってちょっと心配だったんだ。なんでか知らないけど、周りのやつら、みんなして野々宮のこと、強いヤツ、みたいに思ってるから。
実際は、そこまで強くもないし、普通の女の子なのにな」

不思議そうな顔で聞かれて、なんて答えればいいのか困ってしまう。

自分がツンツンしている自覚はあるくらいだから、周りから見たら私は相当可愛げのない女なんだと思う。

人に意味もなく優しくされたり甘やかされるのが苦手で落ち着かないせいで、そういった言葉をかけられると、つい突っぱねてしまう癖はもう昔からだ。

心配してくれてるんだなって思っても〝大丈夫ですから〟だとか、そんな風につっけんどんな返しをしてしまう。
だからか、あまり女の子扱いというか、直接的な優しさをもらったことって少ない。

気にかけられるよりは放っておかれる方が落ち着くから、現状には満足しているけれど……。

木崎さんは、私がどんなに突っぱねても〝いやいや、野々宮は女の子だし優しいじゃん〟と、こっちの言い分なんて聞く耳持たずに優しい言葉をかけてくるから戸惑ってしまう。

恐らく、根っこの部分が平沢さんと同じ、世話焼きなんだろう。

「……別に、平気です」

それだけ言って黙ると、信号待ちで車を止めた木崎さんは、「そうかぁ?」と言いながら私の顔をジロジロと見る。
それを怪訝な顔つきで見ていると、木崎さんは意外そうな顔をしたあと、ニコッと笑った。