ピュッと、真冬の風が、下ろしたままの髪を揺らす。
冬は空気が澄んでいるから星がきれいに見えるだとか聞くものの、こう寒いと立ち止まり夜空を見上げるような余裕なんて持てない。

寒さに目を細めながら鍵をしめ、それから隣の部屋へと行きインターホンを押すと、すぐに鍵とドアが開けられた。

「華乃ちゃん、お疲れ」

再会したときからずっと変わらない笑顔で迎えてくれる平沢さんが着ているのは、いわゆるジャージ。
裏地なんてないやつだ。上なんて、薄そうなロンTの重ね着だ。

つるつるした風通しのよさそうなジャージじゃ絶対寒いと思うのに、平気だって笑うんだから、相当寒さに強いのだと思う。

でもこの人、たしか夏も得意そうだったから、基本的な作りが頑丈なのかもしれない。

「お疲れ様です。お邪魔します」

サムターンを回してから部屋にあがると、テーブルの上にはすでにお鍋が置いてあった。
平沢さんがふたを開けると、ふわっと白い湯気が立ち上り、少ししてからお鍋の中の全貌が明らかになる。

中身は、白菜と豚肉のミルフィーユのほかに、えのきにシイタケやウインナー、ワンタンが見える。
彩程度に浮いているにんじんはお花型で、器用だな……と思わず笑ってしまう。

「ん」
「ありがとうございます」

お鍋から適当な量をよそった取り皿を渡され、お礼を言う。
平沢さんが自分のぶんもよそったのを見てから、ふたりして手を合わせて「いただきます」と食事をスタートした。

料理上手な平沢さんがつくったお鍋は、間違いなくおいしく、箸が進む。
食べ終わったころには、すっかり身体が温まっていた。