朝日の差し込んだ部屋は、よく夕食を食べにきていたときと、なにも変わっていなかった。

懐かしさが胸を打ち、そんな自分におおげさだなと思うも、ジン、と小さな感動が広がる。

少し前、土田さんたちに無理やり飲み会に参加させられたときも入ったは入った。
でもそのときとは少し違う。

平沢さんとふたりのときにだけある、部屋の雰囲気が懐かしくて嬉しくて、仕方なかった。

この部屋で、いったい、どれくらいの時間を平沢さんと過ごしたんだろう。
思い出していけば、そのひとつひとつがあたたかく光っていて……ああ、と思う。

当たり前だったから、気付かなかった。
あまりにしっくりきすぎて、気付かなかった。

平沢さんが、どれだけ好きだってことを。

いつのまにか、こんなにも気持ちは溢れていたのか。
思い出のなかからこぼれる想いに呆れて笑ってしまう。

「華乃ちゃん、早くおいで」
「あ、はい」

先輩だから、じゃなくて。
隣の部屋だから、じゃなくて。

「今日の夕飯は鍋ね」
「ああ、はい。前、言ってましたもんね」

「そう。鍋、せっかく出したのに、この冬は使えないまましまうのかと思った」
「え、まだしてなかったんですか?」

「うん。だって、華乃ちゃんとしたかったから。他のヤツととか、ひとりでとか、する気にならなかったし」

平沢さんを想う気持ちは、ずっとまえから、きっと――。

「あとで一緒に買い物行こう。手、繋いで」
「え。それはちょっと」
「えー。俺は繋ぎたい」
「えー……じゃあ、誰も見てないところだったら」


とっくに、恋だった。








END