辛辣なツッコミを入れられた木崎さんが、しょぼんと肩を落とすのを眺めてから、とりあげられたビールの代わりに仕方なくお水を飲んだ。
居酒屋の個室。
課でも会社ででもない、プライベートの飲み会に出席しているのは、三人だけ。
きっかけは、木崎さんに誘われたからだった。
先週、うっかり泣いてしまったせいで余計に心配させたようで、〝今日、飯おごらせてくんない? で、ちゃんと食べてくれると嬉しいんだけど〟と、懇願するように言われた。
もともと太らない体質で、体重計に乗るのは健康診断のときくらいだった。
でも、さすがに周りに痩せたんじゃないかと言われて、先週乗った体重計は、四月の健康診断時よりも四キロ落ちていて、正直びっくりした。
最近、胸が痛い胸が痛いと思っていたけれど、それって気持ち的なことだけじゃなく、もしかしたら胸から肉が削られていたからなのかもしれないと、冗談じゃなく思う。
これ以上削られたら、ちょっともうさすがに見るに耐えないし、どうにかしないとマズイ。
周りの人間や恋愛だけにじゃなく、自分自身への興味も薄いから、明らかな膨らみ不足の胸にコンプレックスを感じてきただとかそんなことはない。
なのに、そんな私が危機感を覚えるということは……相当、ということなのだろう。
こんな結果になるのなら、精神的に落ち込んで食べられるような状態じゃなかったとはいえ、無理やりにでも詰め込んでおくべきだった。
〝俺とふたりじゃなくてさ、樋口も一緒。店も樋口のお勧めのところで、美容っていうか、そういうのにいい料理が出るっていうし。な? 女子は好きだろ? 美容〟
だからってわけじゃないけれど。
木崎さんの口から出た〝美容〟の言葉に頷いた。



