とっくに恋だった―壁越しの片想い―



「電車。野々宮もだろ?」
「はい。ここから二駅です」
「じゃ、とりあえず駅行くか」

頷いて、木崎さんの隣を歩き始める。

こうして並ぶと、木崎さん身長……というよりも身体が大きいなぁと改めて思う。
大きい、というよりも厚みがあってガッシリしてる。

平沢さんも割とそういうタイプだけど、木崎さんはそれ以上だ。

今でもなにかスポーツをしているんだろうかと思い会話に出すと、地域のサッカー部に入っていて、土日は練習や試合に明け暮れているらしく、なるほどと頷けた。

駅から電車に乗り、最寄駅に着き、「じゃあここで」と下りようとすると、「あ、俺もここ」と木崎さんまで下りてくる。

同じ路線の電車に乗ったときも、〝あれ……?〟とは思ったのだけど。
今まで乗っていた電車が発車して去っていくのを見てから、木崎さんをじっと見上げた。

私が疑っているのがわかったのか、木崎さんは目を泳がせる。

……嘘、下手すぎ。

「私、もう大人ですし、わざわざ送ってもらわなくても大丈夫ですよ」

そう告げると、木崎さんは一瞬ビクッと肩を揺らしてから「ち、違うって!」と慌てたような笑顔を浮かべた。

「ちょっと探検? っていうか、歩きたいなーって。別に、野々宮が心配だから送っていこうだとかそんな風に思ってないし、本当にたまたま!」
「……へぇ」

それでもじとっと見続けていると、木崎さんは私の視線に耐えきれなくなったのか、また目を泳がせたあと「だって!」と白状する。

ちょろすぎて心配になる。