「野々宮、お疲れー!」

ひとしきり飲んで騒いで満足したのか。
木崎さんが、「よいしょ」と隣に腰をおろす。

片手に持っている中ジョッキは、もう残りわずかだ。

「ビール、頼みます?」
「あー、もういいや。これ、四杯目だし。そろそろ止めとかないと、また大通りの植木で寝ちゃう」
「ああ……四月でしたっけ」

四月の歓送迎会。

木崎さんは飲んで騒いで羽目を外し、二次会で別れたあと、国道の植木に埋まって寝ていたのを、少し遅れてお店を出た樋口さんに発見される、という過去を持つ。

お酒大好きな木崎さんだけど、それ以降、アルコールは腹八分目にしているらしい。

「四月はまだあったかかったけど、今はなー。多分風邪引く」
「四月でもまだ寒いですし、樋口さんに拾われなかったら風邪引いてましたよ」
「あれから樋口、俺のことすげー冷たい目でしか見なくなった」

「それが普通の反応ですよね。えっと、じゃあなにかソフトドリンク頼みますか?」
「んー、そうするかな。ウーロン茶。野々宮は?」

メニューを見せられて、それを覗き込みながら答える。

「ジンジャエールで」
「なんか食えば?」
「さっきあんみつ食べましたから」

アイスも乗って四百五十円という、居酒屋にしてはまぁまぁな値段のあんみつを食べた。

空いた器を差しながら言うと、木崎さんは納得いかなそうに眉を寄せる。
駄々っ子みたいな、そんな表情だ。