平沢さんは、私のパーソナルスペースが広いってことを言いたいんだろう。

確かに、最初は平沢さんをうっとうしがるだけで、こんな風に当たり前のように並んで座るまで随分かかったから。

つまり、平沢さんにとっては攻略ゲームみたいな感覚なのかもしれない。

自分が開拓した場所に、新規のプレイヤーが土足で踏み入れてきて嫌だ、みたいな。
逆に言えば、時間をかけて開拓した自分だけの場所ってことへの優越感みたいな。

そこに、私への特別な感情なんかないのに。

――なんて残酷な人なんだろう。

「私は……」

ぽつりとこぼした声が、聞こえたのか。
平沢さんがこっちを向く。

私もゆっくりと平沢さんのほうを向き……まっすぐに視線を合わせた。

じっと見つめる瞳が、不思議そうに私の言葉を待っている。

「私は、平沢さんにとって、なんですか?」
「なにって……」

驚きからか大きくなった瞳を見つめながら続けた。

「私を……」

〝私を、女として見てください〟

鳥山さんと同じ場所に立たせてくれなくていい。

でも、せめて……せめて――。


見つめる先で、大好きな優しい瞳が動揺からか揺れていた。