誰にも何も言わずに早退してきたあたしは、そのままバスに乗って病院まで来ていた。


颯は昨日家に戻ってきていたから、今日はきっと病院にいる。


そう思ったのだ。


あたしは706号室の前で立ち止まり、呼吸を整えた。


バスを降りてからここまで走って来たから、汗で前髪が張り付いている。


ハンカチで汗を拭き、ドアをノックする。


すると、すぐに颯が出て来た。


「純白、今日学校は?」


驚いた顔で颯がそう聞いてくるので、あたしは「早退した」と、答えた。


昨日の事もあるので、颯はそれ以上何も聞いてこなかった。


あたしはチラリと希彩ちゃんを見た。


まだ目は覚めていないようだ。


「ねぇ颯、少し話がしたいんだけど」


「ん? あぁ、わかった。場所を移動しようか」


そう言い、あたしたちは2階にある小さな院内喫茶店に向かったのだった。