怖い短編集

私の心臓は、

ドキドキと大きな音を立て、

私は体中が震え出すのを

感じていた。








「そ、

そうなの……、

ひき逃げが、

あったの……」








私は、

浩史に動揺した自分の気持ちを

悟られないように、

冷静さを装って言った。








「でも、

ひき逃げなんて……。








事故を起こした人も、

救急車くらい呼んでやれば

良かったのに……」








「それで、

ひき逃げに遭った人は、

どうしたの?」









「それがね、

今日の早朝に

息を引き取ったみたいだよ。







まだ三十代前半の男性だって。







事故が起きて、

すぐに救急車が来ていたら、

助かった可能性が

高かったらしいって……」