僕は家に帰ると 誰にも気づかれることのない 空気になりたいと思った。 父と母の怒鳴り声が 部屋の中に響き、 僕は二人の争いに巻き込まれないように、 そっと息をひそめる。 僕は何も聞きたくない。 僕は何も見たくない。 僕は心がないマネキンのように、 何も感じない存在になりたかった。 だって、子どもの僕にだって はっきりとわかっていた。 父と母の仲は、 もう修復することが できないって……。 この家の中には、 憎しみだけが 満ちているって……。