「あの女のところになんて
行かせない!」





部屋から出て行こうとする父の腕を
母は鬼の形相で引っ張った。




「離せよ!

俺はお前といると、
イライラするんだよ」




「ダメ、
行っちゃダメ。

私、
あなたをあんな女のところには

行かせない!」




父はそう言った母の手を振り切って、
部屋を出て行った。




僕はその様子を部屋の隅で、
いつものように怯えながら
見ていた。