怖い短編集

田中浩史、

三十二歳。








この言葉は、

私の聞き違いだろうか?








私がテレビ画面に目をやると、

テレビ画面には、

見間違えることのない

夫の浩史の顔が、

ハッキリと映っている。








ひき逃げの被害者は、

夫の浩史……。








だとしたら、

今、

私の目の前にいるこの人は……、

いったい誰?







私は、

私の目の前にいる浩史に

目を向けた。